第3章 パンと卵とコーヒーさえあれば
シワになると嫌な服だけハンガーに掛けて、クローゼットにしまって。Tシャツとか下着はとりあえず畳んで紙袋に入れておこう。
下着用の洗濯ネットも買ってこなきゃな……って、そういえば、一緒に生活してたら洗濯も一緒にするのが普通なのか……?
買ってきたばかりのブラとショーツのセット(綺麗な薄い水色)を手に、ふと考える……ま、私がまとめて洗濯すれば赤井さんに見られることはないか。
「さん……出掛けられるか?」
「はい!あ…っ」
声と共にノックをされた後、ガチャリと部屋の扉が開く。一拍遅れて下着を紙袋に突っ込んだけど、見られてないだろうか。
……いや、見られたな。赤井さんの顔が愉しそう。
「水色もよく似合いそうだな」
「…だといいんですけどね」
「まあ、昨日のネイビーも良かったが…」(たしかに紺色だったけど!)
「ッ!だからそれは忘れてくださいって言いましたよね!…でも赤井さんは黒っぽい服ばっかりですよねー…好きなんですか?黒」
「服が黒ばかりなのは単に合わせるのがラクだからだな…何色が好きかと言われれば、幼い頃からいつも何故か赤色に惹かれるような気もするんだが…」
「ああ…赤井さんですもんね…やっぱりそうなんだ…」
「この名前のせいか?それとも俺は赤が好きだと書かれていたか?」
「いえ。なんて言えばいいのかな…赤井さんのモデル、じゃないし…前世でもないし…えっと…まあ、そういう人が、赤をメインカラーにしてる人だったんです」
「前世のことはよく分からんな…」
「分かんなくていいです!すみません変な話して!あの、お買い物の前にランチ行きません?」
「いいぞ、何が食いたい」
「うーん…赤井さんが好きな食べ物を食べたいです!」
「そうだな……インドカレーでも食いに行くか。いい店がある」
「インドカレーが好きなんですか?」
「好きか嫌いかと言われれば、好きだ」
「…じゃあ嫌いな食べ物は?」
「……特に無い。支度が出来ているなら行くぞ」
…赤井さんって掴めない人だ。
でも、思ってたよりも彼は笑うし、そんなに怖くなくて、たまに意地悪だけど、なんだかんだ優しい。
彼の大きな車に乗り、まずはカレー屋を目指す。今日は夕方か夜から雨の予報だから、早めに買い物まで終わらせて帰ってきたい所。