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怪しい者ではありません【名探偵コナン】

第3章 パンと卵とコーヒーさえあれば


まるでデジャヴ、この世界にやって来たばかり時のよう。米花駅周辺で新たな衣類の買い物を済ませ、いくつもの紙袋を両手に下げ歩いていて思う。

だけど今から戻る先は赤井さんの家。この短期間で私の生活拠点は三度も変わった。ちょっと異常なペースだな。

こっちの世界は異常なことばかりだ。昨日なんて本当に怖かったし……でもまあ…異常なこと、怖いことばかりでもない。

なんせ大好きなマンガの中の世界っていうのが一番大きいのか。今朝は電話越しに蘭ちゃんの声も聞けたし、ハカセとのお茶も楽しかった。それに…今日は買い物ついでに赤井さんをランチに誘ってみようと思ってて…どこへ行こう…って、考えるだけでもすごく楽しい。


タイミングよく、お昼前に彼のマンションに戻ってこれた。玄関の前まで来て、ふと勝手に入ってもいいものなのか迷い…とりあえずチャイムを鳴らしてみた。

…しかし応答がない。赤井さんはまだ寝てるのかも?

仕方なく鍵を出して解錠、そーっと中に入る。


「帰りましたー…」


寝てる所を起こしたら悪いと思い、小声を出すも、返事はない。

LDKに部屋が2つあるこの家。リビングのテーブルの上には赤井さんのタバコとマッチが置かれているけど、彼の姿はない。やっぱり寝てるのか。

一応私用の(以前、住むなら私はこっちかな、と言った)部屋に入り、荷物を下ろす。今は分厚いカーテンが掛かっているけど、それだけで他には何もないガランとした部屋。

とりあえず紙袋から洋服を出して、タグを切ろうとした…けど、そういえばハサミが無い。

リビングに戻ってハサミがありそうな所を探していると、背後から物音と共に赤井さんの声が聞こえた。後ろを振り返れば…


「帰っていたのか」

「は、はい……ッ!?」


濡れた髪をタオルでガシガシしているお風呂上がりの赤井さん(身に着けているのはボクサーパンツ1枚のみ)が立っていた。

割れたお腹に、肩から腕へかけての隆々とした筋肉の美しさ……目から入ってくる情報が衝撃的過ぎて言葉が出ない。


「ホテルはどうだった」

「……えっ、と……」


さすが赤井さん!やっぱり身体もハイスペックなんですね!素晴らしい肉体美です…!一緒に生活したらいつか見れちゃうかも、なんて少し思ってたけど…!

情けないやらそんな言葉しか頭には浮かんでこなくて、くるりと彼に背を向けた。
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