第3章 パンと卵とコーヒーさえあれば
ただ横になったまま時間だけが過ぎ、朝になり。コナンくんから電話が掛かってきたことでハッとする。電話に出れば、スマホからいきなり響いてくる大声。
「さん!ニュース見たけど大丈夫なの!?」
「おはようコナンくん!それが全然大丈夫なの!昨日はあのホテルにもいなかったしね」
「あれ?…もう違うホテルに移ってた?」
「…しばらく知り合いの家に泊めてもらえることになってね」
「え…知り合い?その…信用できる人なの?その人…」
「それは絶対大丈夫。いつかコナンくんにも紹介したいな」
「へー…もしかしてボクみたいに元々知ってた人?」
「そういうこと!あ、今日お金取りに行きたいから行ってもいい?」
「来るだろーなって思ってたよ。学校行く前にハカセに鍵預けとくから」
「さすがコナンくん!」
電話の向こうから、“コナンくーん!ごはんできてるよー!”と蘭ちゃんの声が聞こえてきた!
“はーい!”と返事するコナンくん。(可愛い!)
「じゃ、さん、またね!」
「うん!電話ありがとう!」
静かになった部屋の中、誰かに心配してもらえることの嬉しさに気付いた。
(蘭ちゃんの声を聞けたのも嬉しかった)
そーっと寝室を出れば、リビングのソファに座る赤井さんを確認。その姿は昨日と全く同じ格好……
「おはようございます…」
「ああ…誰かと電話していたのか?」
「はい!いつか赤井さんに紹介したいです!すっごい賢い子で!」
「…子供か?」
「子供だけど、すっごい子なんです!」
「そんなにすごいのか」
「並の大人以上の頭脳の持ち主ですよ…会えば分かります」
「…是非会いたいものだな」
「まあ何もしなくてもそのうち会えるかもですけど…あ、私、朝ごはん作りますよ!…食べます?」
「ああ」
キッチンへ向かい、冷蔵庫を開ける。が、中にあるのは水のペットボトルと缶コーヒーが大半で、あとは卵2つとハム1パックにバター、食パンのみ…
失念してた。彼はまだ沖矢さんになる前だから料理はしてないのか……よく見れば調理器具の類も見当たらない。
「赤井さんっていつも何食べてるんです?」
「朝はトーストだな、時間があればハムと卵も乗せるぞ」
何か作ってあげようと思ったけど、いつも彼が食べてるのと同じものしか作れなさそうで残念だ。