第2章 心機一転、二転、三転!?
「あの…赤井さんは寝ててもらって構いませんよ?」
「俺は別に大丈夫だ。気にするな…」
テレビから流れるガス漏れの報道をさんと眺めながら、ただ時間だけが過ぎていく。退屈であるのは間違いないし、全く眠くないと言えば嘘になる。
だが、まだ彼女の前で眠る訳には……
突然宮野明美と身体が入れ替わった、おまけに自分は別の世界から来たから身分証がない……そんなことを言うこの女を、俺はまだ完全には信用しきれていない。
とは言え、話せば話す程、彼女の発言の信憑性は高まるばかり、怪しい点も見当たらない。
今夜酔い潰れていたのも演技だとは考えにくい。もしも彼女が何処かの捜査官や工作員であるなら、あんな体たらく…有り得ない。
何度か外出中の彼女を尾行したこともあったが、さんには辺りを警戒するような様子もない、ごく普通の女性(人目を引く容姿ではあるが)にしか見えなかった。
ただ気になるのは……工藤新一、ジンが殺した少年の家に彼女が世話になっていた点。それから、たまに彼女と接触している、おそらく彼女を助けたらしい、謎の小学生の男児の存在。江戸川コナンというこの男児についても調べたが、さん同様、戸籍が見当たらない。彼もまさか別の世界から来た人間なのか。
煙草を1本取り出し、火を点けた瞬間だった。
テレビからなのか窓の外からなのか、怒号のような大きな音が聞こえ、画面の中が揺れる。
爆発が起きてしまったようだ。
「ウソでしょ……」
さんの顔から血の気が引いていく。
「何かに引火したか…」
「どうしよう……」
「部屋に何か大切なものでも置いていたのか」
「いえ、特には……」
「ならまた買い直せば済む話だ」
「ですね……ホテル変えなきゃな…」
「さん、ここに住むか?」
「……さすがに今日はお願いしたいと思ってますけど」
「俺はいつまででも居てもらって構わんぞ」
「それは……考えさせてください」
俺が彼女に同居を提案するのは、彼女が怪しい動きをしていないか直接監視したいからだ。
それに……単純にさんを女性として気に入っているから…そうでなければ保護プログラムを受けさせることも無かっただろう。