第2章 心機一転、二転、三転!?
赤井さんの車でホテルに戻る…が、あと少しで到着という所で、赤色棒を掲げた制服警官に車を停められてしまった。
おかしい。深夜にも関わらず辺りがやたら騒々しい。消防車にパトカーに救急車、何台もの緊急車両が車道を塞ぐように停まっていて、近くには報道陣と思しき人の群れもわらわらと…
車に寄ってきた警察官に何事かと尋ねる。
「すぐ先のホテルで大規模なガス漏れがあったようです、爆発の危険があるので、離れてください!」
「爆発!?どのホテルですか?私あのホテルに泊まってる者なんですけど…」
「現場は正にそのホテルです!中に入るのは無理ですよ!いいから早く避難してください!」
赤井さんは車を転回させ、今来たばかりの道を戻る。
「災難だな」
“災難”と言う割には顔が少しばかり笑ってるように見えるよ赤井さん……
「ガス爆発なんて…ある訳ないですよね?」
「さあ…分からんがその可能性もゼロではないから避難しろと言われているんだろう…家に戻ろう」
「……お願いします」
ついさっき車に乗り込んだ駐車場で車を下り、再び赤井さんの家に戻ってきた。
リビングのテレビの電源を入れれば、画面には正に先程見た光景が映し出されており、ガス爆発の危険があり、近隣に避難要請が出ている、との報道真っ最中だった。
もしもホテルで自分が寝ている最中に爆発に巻き込まれたら…なんて恐ろしいことが一瞬脳裏を過り、背すじに寒気が走った。
死ぬことへの恐怖は並の人より薄かった筈の私だけど、こっちでの自由な生活に慣れてきたからか、今はハッキリ怖いと思う。
「突っ立っていないで座ったらどうだ」
「あ、はい…」
「コーヒーでも飲むか?冷えているものしかないが」
「頂きます、ありがとうございます…」
ソファに座らせてもらうと、冷蔵庫から出したてと思われる冷たい缶コーヒー(やっぱりブラック)が目の前に差し出された。
受け取り、ひとくち飲んで、息を吐く……
「赤井さんが居てくれてよかったです…」
「そうか?」
「そうですよ…一人だったら今頃どうなってたか…」
「酒のことか?それともガス爆発のことか」
「どっちもです……でももうお酒のことは忘れてください!」
「あんな面白いもの、しばらく忘れられんな」
フッと愉しそうに笑いながら、彼は隣に腰を下ろした。