第2章 心機一転、二転、三転!?
香りの良い美味しい蕎麦を食べながら、この前とは違ういろんなことを赤井さんに聞かれた。
「俺はこの先も生きているか?」とか「FBIの仲間が死ぬことはないか?」とか。
(彼のような仕事をしてて、自分が生きているか、なんて聞ける人ってすごいと思う。死んだと言われるのが怖くないんだろうか)
まだ物語は完結していないけれど、私の知る限り赤井さんは生きてるし、赤井さんが作中で親しくしていた同僚は誰も亡くなっていない、と伝えた。
「では…俺が行方不明の父を探していることは知っているか?」
「…はい。だけど、まだ見つかってないです…でも生きてらっしゃるような雰囲気は感じます!」
「……では…母や弟、妹はどうだ?」
「皆さん元気にされてますよー!」
「そうか……」
口調は淡々としてるけど、どこかご満悦そうに見える赤井さん。
彼のお母さんの身体が縮んでしまってることは、まだ言わないでおこう。
しばらく黙々と料理を食べ進め……先に彼が食べ終わり、少し遅れて私も食べ終えた。
「しかしアレだな……さんも見知らぬ土地に一人というのは大変だろう…」
「ああ、まあ…最初はずっと夢だと思ってましたから大変とも思ってなかったんですけどね……でもなんとかやれてます」
「家はどうしたんだ?誰かに借りてもらったのか」
「…今はホテル住まいなんです」
「そんな金、誰か払ってくれる人間がいるのか」
少し腰を上げ、テーブルの向かいに座る赤井さんに顔を近付け、口の横に手を立てて声を潜めて話す。
「実は…私現金だけは沢山持ってて…」
「…なるほど…これから起こる事を知っている君だからな…競馬でも当てたか」
「あはは…まあ、働いて稼いだお金じゃないのは確かです。ご存知でしょうけど私戸籍がないから身分証もなくて、何の契約もできなくて…でもコレだけは…お金は自分で払ったけど名義だけ別の人で…」
スマホを手に取り、再び席に座り直した。
「……だがそのままでは不便じゃないか?」
「そりゃ不便ですよ…」
「……俺が力になろうか」
「……なって頂けたら、それは、すごく、嬉しいですが…?」
「とりあえず店を出るか」
「はい…」
赤井さんが私の力になってくれるって…!?
何をして頂けるのかは全く謎だけど、嬉しさから頭がポーッと温かくなってきた。