「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第3章 金座駅までの誘惑とドギマギ
「四個目ですよね、丸井くん」
木手がボールを受け取り、丸井に振ります。
「ああ。次の湫袋駅で立っている人から五個目のボールをもらったらゲームクリアだよ。あ、それ、お前が持ってていいよ」
黒部コーチのゲームは木手との勝負ではないことが分かったため、四個目のボールは木手に持たせた丸井です。木手はボールを荷物の中に入れました。
「ゲームはラストまで気が抜けませんね。湫袋駅に着くまで、どうかお気を付けて。アデュー」
理想のペアは柳生に見送られながら、切符販売機の方へ向かって行ったのでした。
一方、理想のペアを追いかけず、北万住駅にまだいた濡烏は、友人の黒部コーチに電話で報告をしていました。
「黒部、ごめん、あの子たちに逃げられた。二人とも、オレの正体が分かってしまったかも」
「君が自分から話したのでは?」
「ハハハ、木手くんには白状したよ。あのときは丸井くんが本当に本当の外国人にさらわれて緊急事態だったからさ」
「丸井くんは無事ですか?」
「悪い、報告が出来てなかったな。丸井くんは無事だよ。外国人から自力で逃げて来たみたいだ」
「良かった。ありがとうございます。お疲れ様でした。もうあなたは自由でいいですよ」