第3章 金座駅までの誘惑とドギマギ

　理想のペアは窓口で精算をし直し、改めて金座駅への切符を買います。


　「切符、買い直しになったけど、これで今度は大丈夫だな」


　「先ほど、駅員の方に月比谷線の何番ホームの電車に乗ったら良いのか聞き逃してしまいましたね」


　「そっか、うっかりしてた。うーん、電光掲示板に頼るのはもう怖いし、また駅員さんに聞きに行こうか」


　理想のペアは、再び駅員を探しました。すると、改札口の近くに駅員はいたのでした。


　「すみません、金座駅に行きたいのですが、月比谷線の中目白駅行きの電車って何番ホームですか？」
　丸井が尋ねると、


　駅員Ｂ「七番ホームですね」
　丁寧な口調で答えてくれた駅員Ｂです。


　「ありがとうございます」
　駅員Ａのときと同じように木手がお礼を言い、丸井が頭を下げ、その場をあとにしていました。


　北万住駅構内を数分歩いてから、丸井はハッと気付いたことを口にします。


　「そういや、月比谷線ってどっちだっけ？」


　「あなたねぇ、分からないで歩いていたのですか」


　「お前はそう言うけど、月比谷線がどっちか分かるのか？」
　呆れていた木手にそう返したです。


　「……知りません」
　と、言った木手のことを笑ったり、怒ったりすることなく、


　「あっち行ってみるか」
　丸井は駅員をまた探そうと促しました。