「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第3章 金座駅までの誘惑とドギマギ
それは、茶髪の外国人男性を警備員に引き渡してしまおうということです。
「あの、すみません」
丸井は目の前を通って行った警備員を呼び止めました。
「はい」
警備員が丸井の方を振り返ります。
「こっちにいる外国人が迷ってしまったらしくて。オレ、分からないって言っているんですけど、この人、ついて来ちゃって……」
「そっか。あとはこっちでこの人の対応するから君は行っていいよ」
「ありがとうございます」
丸井は深く頭を下げ、警備員にお礼を言ったあと、ほぼ走るように早歩きしました。
「Hey, you(おい、お前)」
丸井のあとを追おうとしていた茶髪の外国人でしたが、警備員に英語で足止めされていました。
彼が警備員を振り払ったときには、丸井は息を切らしながら別の電車にすぐ乗り、上手く逃げることが出来たのでした。
外国人は何か叫んでいましたが、電車の中にいる丸井に声が届くはずもなく、複数の警備員に連れ去られてしまったのでした。
丸井は南傘ヶ谷駅よりしばらく先の新色三丁目駅で降り、すぐ携帯で木手の番号にかけ、電話をしました。
「もしもし」
「……」
「あれ? もしもし?」
木手の番号に繋がり、通話中になっているのですが、木手の声が聞こえません。