「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第2章 芝谷駅で迷う外国人と幾つもの誘惑
「あなた、日本語が話せたのですね」
「ああ、僕は本当は日本人だ。Uー17合宿所(アンダーセブンティーンがっしゅくじょ)の黒部由起夫を知っているだろう?」
「はい、お世話になっているコーチですが」
正体を明かした青年に木手は黒部コーチの姿を思い浮かべながら答えました。
「僕は黒部の友人で、黒部に頼まれて君たちのゲームクリアを邪魔しに来た者だ」
「そうですか。まあ、ゲーム途中から何となく気付いていましたがねぇ」
「やっぱり、そうだよな。で、もう一人の子は? あと、茶髪の香水ぶっかけ外国人ヤローは?」
嫌なニオイを思い出していた青年は、わざとらしくこんこんと咳き込んでいます。
「そのヤローに丸井くんは連れて行かれてしまいました」
「そうだったのか。便所に駆け込んでいる場合じゃなかったな。悪い、助けられなくて」
青年は申し訳なさそうにしていました。
「あなたがそこまで謝るほどでは……」
「もう一人の子、丸井くんって言ったな。黒部のゲームは一時中断だ。黒部には連絡しておくから、丸井くんを早く助けに行こう」
「ええ」
木手が万川駅で黒部コーチの友人であった青年と話していた一方、丸井は茶髪の外国人から逃げる隙をうかがっていたのでした。