「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第2章 芝谷駅で迷う外国人と幾つもの誘惑
丸井は抵抗する間がありませんでした。茶髪の外国人に強引に腕を引かれるまま、彼と電車に乗ることになってしまいました。
座席に隣ぴったりくっついて離れない茶髪の外国人に、丸井は風船ガムを膨らませ、困っていたのでした。
万川駅で丸井が茶髪の外国人に連れ去られたことで冷静でいられなくなった木手は、
「すみません、先ほど行った電車を止めてくれませんか」
と、駅員に声を掛けましたが、駅員に断られます。
「だめだめ。乗り遅れたのなら、次の時刻の電車に乗りなさい」
「いいえ、そうではなく……」
「とにかく、一回出発した電車を止めるなんて出来ないよ。ダイヤが乱れるからね。悪いけど行くよ」
駅員はそれだけ言ったあと、行ってしまいました。
駅員が見えなくなってから、木手はその場にずっと立ち尽くしたままでした。駅の中が混んでいたため、何人か人とぶつかってしまっていました。けれども、ふらっとならず、木手はずっと立ったままの状態でいたのです。木手がいつもより暗い表情になっていると、聞き覚えのある声がします。
「君、もう一人の子はどうしたの?」
外国人のフリをした青年でした。彼が日本語で声を掛けてきたからか、木手はびっくりします。