「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第2章 芝谷駅で迷う外国人と幾つもの誘惑
「?」
丸井の視線に気が付いた木手が振り向きます。
「さーて、三個目のボールを持ってる人、探すか」
丸井はごまかすように両手を頭の後ろに組み、好きな曲の口笛を吹いていました。
そして、理想のペアが青年と万川駅をうろうろしていると、
「おーい」
と、呼ぶ声がしたのです。平古場凛がエスカレーター付近で手を振っていました。
「平古場か。うしっ!」
丸井は平古場の姿を見つけた瞬間、早歩きをして行きます。
「You walk fast(歩くの速いね)」
青年が言ったあと、木手は何も言葉を返さず早く歩いていました。
「平古場」
丸井はにこっと両手を前に出します。
「はいよ」
平古場は、両手を差し出していた丸井にボールを渡します。
「サンキュー。これでボール三個目。あと二個でクリアだろい」
「ぬーんち、こんなゲームを?」
「え?」
平古場の沖縄方言に何度か瞬きしていた丸井でした。
「あなた、ぬーんちの意味が解らないのでしょう。どうしてと言う意味です」
と、木手が訳します。
「ああ、どうしてか。それはやっぱり……、負けないため?」
やっぱりと言ったあと、木手を一瞥し、ひと呼吸置いたあとにそう言った丸井です。