「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第2章 芝谷駅で迷う外国人と幾つもの誘惑
「お、どうした?」
丸井が膨らませていた風船ガムが割れました。
「電車で万川駅に向かう途中、湫袋駅を通るようですよぉ」
と、木手が携帯の画面に映っている地下鉄の乗り換え情報を丸井に見せます。
「本当だ。でも、湫袋駅に寄る前に金座駅に寄る順番で黒部コーチから指示されてるし……」
「行く駅の順番を変えるのはNGですか」
「多分な」
「オレたちはNGでも、あの外国人の彼は湫袋駅で降りても問題はないでしょう」
「そうだな。これ以上、付き合わせちゃ悪いもんな。湫袋駅に着いたら教えようか」
そう話し合ったあと、理想のペアは外国人のフリをした青年と万川駅へ行く電車に乗りました。
電車は順調良く湫袋駅まで到着します。
「I arrived at Kudebukuro Station.(湫袋駅に到着しましたよ)」
丸井が青年に知らせ、
「This is the station you wanted to go to, right?(あなたが行きたかった駅ですよね)」
木手も電車の開くドアを指さしました。
しかし、青年は電車から降りようとしません。