「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第2章 芝谷駅で迷う外国人と幾つもの誘惑
「Shall we go eat?(食べに行っちゃう?)」
丸井が言い、
「Yay(イエーイ)」
青年がテンションを上げ、片手も上げていると、
「No, no, no, no(だめ、だめ、だめ、だめ)」
と、止める木手です。
「何でだよ、キテレツ」
「向こうを見てください」
木手が指をさした先に、見覚えのある人物が立っており、丸井は目を見開きました。片手にボールを持った仁王雅治でした。
「あれ? 仁王がどうしてここに? って、そっか、ゲーム」
丸井はだし汁の良い匂いのする方向と仁王のいる方向を交互に見て言っていました。
「まるで、黒部コーチのゲームに集中が出来ておらんようじゃのう」
「電車で移動してたら、腹が減ってきちゃってさ」
「食べない方がいいんじゃろ」
「はぁ?」
仁王の言葉の意味がさっぱりな丸井は目を細めますが、木手は解ったようです。
「はい、食べると負けみたいなものです。特にゲーム中は」
と、丸井に聞こえないよう、仁王にぼそっと言いました。
「ほぅ、おまん、大変じゃのう。ブン太は食べ物の誘惑に負ける傾向があるなり」
仁王も小さい声で返します。