「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第2章 芝谷駅で迷う外国人と幾つもの誘惑
階段を下りていった理想のペアの姿が遠くなったあと、
「はあ、外国人のフリはなかなか大変だな」
何と、外国人男性は日本語でつぶやき出したのです。
彼は実は黒部コーチの友人で日本人でした。黒部コーチに頼まれ、外国人のフリをしていたのです。そして、理想のペアに近づき、ゲームクリアを邪魔するために今回来た青年でした。
「Hey, I'm going to miss the train.(おーい、電車に乗り遅れちゃいますよー)」
と、英語で丸井に呼ばれ、外国人のフリをした青年は急いで階段を下ります。
「Sorry, I'll go now(すまない。今行く)」
青年は、手を振っていた丸井と両腕を組んで電車の中に乗っていた木手のところまで駆け込んで行きました。
「Last-minute rides are not allowed.(駆け込み乗車はダメですよぉ)」
と、言った木手に、青年は片手を頭の後ろにやり、
「No, I just panicked.(いけない、つい慌ててしまった)」
と、言いました。
「The train may shake, so please hold on to the straps.(電車は揺れるときがあるから、つり革につかまってください)」
丸井が隣の空いているつり革を指さし、青年を促します。