「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第2章 芝谷駅で迷う外国人と幾つもの誘惑
「丸井くん、もうすぐ電車が来てしまいますよぉ」
このままでは、丸井が切符以外のものを買ってゲームオーバーになってしまうと思った木手が阻止しました。
「やべ、美味いものを買うのはまたあとでだ」
丸井は外国人男性と売店に行こうとしたところ引き返し、早歩きで先に五番ホームへ向かいます。木手も早歩きしました。外国人男性はそんなに残念そうにしていなかったようです。彼も理想のペアのあとをついて行きました。
「どうやら、上の看板に頼りすぎていました。柱や壁のところにも、五番ホームへの案内が書かれていたようです」
「電光掲示板と合わせて柱と壁もよく見れば良かったんだな。いやぁ、急いでると周りって見えねえな」
「あなたの場合、急いでいなくてもそうなのでは?」
「……」
ムッとなった丸井は木手を抜かし、五番ホームを駆け足で降りて行きます。
「That kid goes down the stairs fast.(あの子、階段降りるの早いね)」
声を掛けてきた外国人男性に木手は微笑し、
「I agree(そうですね)」
と、返事し、その後はゆっくり階段を下りました。