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「新テニ」理想のペア、Exciting situation

第2章 芝谷駅で迷う外国人と幾つもの誘惑



 「まだ芝谷駅まで全然先だよな」


 「ええ、あと6つほど先のようですよぉ」


 「なかなか座れねえな」


 「新色駅は混みますからね。いつ来ても混んでいるらしいですよぉ。切符代を調べていたときに、そういった多くの口コミを見かけました」


 「人口密度ハンパじゃねえな」

 ここでやっと理想のペアは会話をしました。けれども、そのあとは会話がありませんでした。


 芝谷駅より3つ手前の駅へ電車が走っていたときのことです。カーブにさしかかったか、電車の中が揺れ始めます。


 丸井は、ずっと同じ手でつり革に掴まっていたためか、片手が痛くなり、ちょうどつり革から手を離してしまっていました。揺れでよろけ、隣にいた木手の肩に両手でしがみつきます。


 「!」
 突然の出来事に、木手は驚いた表情です。


 「わりぃ、キテレツ……」
 丸井はすぐに離れ、つり革にもう一度掴まろうとします。しかし、また電車が大きく揺れました。木手の肩に両手でしがみついたつもりが、今度は抱きついてしまったのです。


 電車の揺れが収まったあと、丸井と木手の目が点になってしまったのは、言うまでもありません。


 芝谷駅に到着するまでのあと一駅が長く感じていた理想のペアでした。
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