「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第2章 芝谷駅で迷う外国人と幾つもの誘惑
「切符代は……」
しばらくの沈黙後、丸井と木手は切符販売機から一旦離れ、切符代を調べていました。
丸井は路線図の上に料金が書かれていた切符販売機の上を見上げ、木手は携帯を使って新色駅から芝谷駅までの切符代を検索します。
切符代が分かった二人は再び並び直し、切符販売機で切符を買いました。丸井は早歩きで改札口を抜け、看板を頼りに階段を下り、ホームへ行きます。
「そんなに急がなくても、電車の時間、間に合いますよぉ」
丸井と一緒に早歩きで来た木手が言いました。
「……」
勝負なのに余裕だなと、風船ガムを膨らませ、細目で木手を睨み見ました。丸井の視線を感じた木手は睨み返します。
間もなく、電車が到着し、丸井は木手より前に出だします。
電車が到着後、人が降りて行ったあとにさっと電車に乗った丸井と木手でしたが、座れるところがどこも空いていませんでした。
二人は立ちっぱなしでつり革に掴まって、ただ車掌のアナウンスの声と電車の閉まる音を聞いていました。
発車後、理想のペアの会話はなく、外の景色を二人はそれぞれ見ています。たまに丸井が木手を一瞥していました。
流れる景色と、車掌のアナウンスの声を丸井と木手は注意しながら耳を済ませます。