「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第5章 湫袋駅行き電車内での誘惑
理想のペアは一両目の中をもう少し移動しました。座席はもう座れなかったため、空いているつり革を探します。
「掴まれるところ、ねえかなー」
「あるにはありますが、人で塞がってしまっていますねぇ」
「このまま立ってるかなー」
「あの、ここ、良かったらどうぞ」
「私たち、次の駅で降りるので」
理想のペアが困っていたところ、社会人二人が座席を譲ってくれました。
少年たちは社会人二人にお礼を言い、座席に座ります。
「ふー、座れるって良いなー」
「あなた、話し方が温泉に入っているみたいですよぉ」
「座席のシートがだって温かいだろい」
「言われてみればそうですねぇ。オレには暑すぎるぐらいですが」
「うん、オレもだんだん暑くなってきたかな。喉まで渇いてきただろい。キテレツ、水筒~」
木手に麦茶を分けてもらおうとしていた丸井でしたが、
「もう水筒の中身は残ってませんよぉ。言ったはずですよ。お代わりはないと」
と、木手に言われ、しょげていました。
丸井は黒部コーチのゲームが終わるまで辛抱しようかと心の中で思った瞬間、隣に乗っていた茶髪のナチュラルマッシュの男子高生がペットボトルのお茶を差し出して来たのです。