「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第5章 湫袋駅行き電車内での誘惑
「用済みってことはないのでは?」
と、言った木手です。
「うーん、自由にしていいって、黒部コーチはまだ帰っていいって言ってるわけじゃなさそうだけど」
丸井も唸りながらそう言いました。
「君たちの言う通りなら、まだ帰っていいわけじゃないか。しかし、丸井くんにもオレのことを知られたんじゃ、黒部のゲームをこれ以上続けても仕方ないよな」
濡烏がつぶやくと、理想のペアは首を振ります。
「多分、黒部コーチのゲームはここで終わりではないと思います」
「だよな。もし、終わりだったら、オレたちの携帯にもコーチから電話が掛かってくるよな」
「そっか、ごめん。誘惑以外のオレの自己判断で危うく君たちをゲームオーバーさせるところだったな」
「オレたちをゲームオーバーさせるのが役割なのですから、よろしいのでは」
「うっ」
「お前って本当さー」
丸井が木手に呆れていました。
「ところで、黒部コーチはあなたが何者かをオレたちが分かったことを知っていますか?」
「うん、木手くんは知ってるけど、丸井くんがオレが何者か分かったことまでは、黒部に言ってなかったな」
木手の質問を受け、濡烏は黒部に報告した内容を思い出します。