「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第1章 プロローグ
「おい、ジャッカル? ジャッカルゥー」
と、丸井の声がロッカールーム内で響くだけでした。
それから、木手とぶつかったり、行き会ったりすることについて、何も考えないことにした丸井は、自主練に集中していました。
ラケットの素振りや、サーブ練習を繰り返し、ひと汗かいたときです。珍しい人物に丸井は呼び出されました。戦略コーチの黒部由起夫です。
これまで、丸井は黒部コーチとあまり話したことがなく、どちらかと言うと初対面に近いため、緊張した面持ちでいました。
黒部コーチのあとを付いて行った丸井が来た場所はモニタールームでした。モニタールームの中に入ると暗く、複数のモニターのブルーライトで丸井の目がチカチカしてきます。
「ここにどうぞ」
明かりを点けた黒部コーチは椅子を用意し、丸井を座らせました。
「用は何ですか?」
丸井は尋ねたあと、風船ガムを膨らませます。
「丸井くん、この頃、君は木手くんにぎこちなさのようなものを感じていますね」
「え、普通ですけど」
黒部コーチの言うことに固唾を飲んだ丸井ですが、いつものように笑顔でそう言いました。
「これを観てもですか?」
黒部コーチはこれまでの約一週間分のモニターをコンピューター操作しながら、丸井に見せました。