第8章 素直になれたら
楓「実弥くん、ご馳走様でした。」
甘味処を出て、楓は実弥に向かってお礼を言った。
楓「じゃあ、帰るね。」
くるっ、と後ろを向いた楓の二の腕を実弥は掴んだ。
楓「実弥くん?どうしたの?」
半分だけ振り返った楓を、実弥は抱き締めた。
楓「実弥くんっ?何?ホントにどうしたの?」
あまりの事に楓は、実弥の腕の中で暴れる。
実弥「暴れんな。」
楓「じゃあ離して。」
そう言うと、実弥は腕にもっと力を込めた。まるで、離さない、と言われているようだ。
楓「お願い、離して、、、期待しちゃうから」
楓は、泣きそうになりながら、小さな声で訴えた。
実「、、、期待、すればいい」
実弥の言葉に、楓は顔を上げる。
実「、、俺は、お前が、、」
楓「ダメッ、言わないで。」
楓は、実弥の言葉を遮るように、実弥の口を自身の両手で塞いだ。実弥は目を白黒させている。
楓「ダメだよ、実弥くん。実弥くんには、別にいるでしょ?」
実「はぁ?なんだそれ?」
実弥は楓の両手を外させると、怒鳴り飛ばす勢いで言った。