第5章 勉 強 会 と 夏 空
初めに投入した素麺がちょうど茹で上がったタイミングで、上の階からどたどたと足音。黒尾さん、孤爪と来て、柏木さんに支えられながら灰羽が下りてくる。
『もう自分で下りれるって、
こないだリエーフ自分で言ってたじゃない』
「やっぱちょっと怖いっす、
あと、こうしたら手繋げるし!」
そういう痴話喧嘩はヨソでやってくださいヨソでぇ、と黒尾さんがちゃちゃを入れ、灰羽の介抱を終えた柏木さんはぱたぱたとキッチンへ戻ってくる。
『ごめんごめん、京治に任せきりだね』
「いえ、大丈夫ですよ」
『麺だけざるにもらうね、
で、冷水にぶち込んでそのまま出す!』
そう言うとテキパキと作業を進め、その間に黒尾さんがテーブルを拭いて、孤爪は箸を並べ、灰羽は座ってお客様役。そうしてテーブルには素麺とサラダ、付け合せのツナマヨ和えが並んだ。あと、食べたい人用に魚肉ソーセージとサラダチキンも。
『よし、じゃんじゃか茹でるから、
みんなは先に食べてて、早い者勝ちね!』
いただきまーすと叫び、我先にと麺を確保する。
「馬ッ鹿リエーフお前取りすぎだ!」
「一番育ち盛りなんですけど!」
「ほら研磨も食え、ヒョロイのが遠慮すんな」
「おれはいいから、赤葦にあげなよ」
「いや、俺も作ってるうちに目がお腹いっぱいで」
「なに言ってんの、ほら食べなよ」
あんたたちやかましいもう茹で上がるから喧嘩すんな、と柏木さんがキッチンから喝を飛ばし、大人しくなるうるさい人たち。程なくして、目の前にはまた素麺が追加され、そんなのが3回ほど繰り返された。
みんなサラダも付け合せもしっかり完食、あとは素麺が1,2人前残っているだけ。
『あれ、リエーフあんま食べてない?』
「さっきおやつもらったんで、
その分がまだお腹に残ってます!」
『じゃ、わたしも食べよう〜』
みんながお腹いっぱいになってから、柏木さんはようやく椅子に座ると、素麺を茹でながら作っていたらしい卵焼きと、自分用に取っておいたであろうサラダ、ツナマヨ和えを持ってきた。