第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
めぐる気持ち、ぐるぐる廻ってどこへゆく。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
規則正しくリズムを刻む、電車の音。冷房の効いた車内は、夏休みだからか東京方面へ向かう人で溢れている。首を捻って窓を見れば、のどかな風景から徐々に宅地へと移り、駅の近くを通る度にビルが増えていく。
隣の柏木は、1週間の疲れが溜まったのか、乗って10分もしないうちにすやすやと寝息を立て始めた。俺の肩を、枕にして。
特急にしてよかった。停車回数と人の乗り降りが少ない方が、こいつもゆっくり休めるだろう。いつもと違う環境でせっせと働いて、その上途中でツキノモノが被ったんだ、無理もない。
「ハァ......」
くっそ、こいついい匂いしやがる。まぁ昔から知ってるけど。こいつが、リエーフと付き合う前から、俺と研磨は仲良かったから。
嫁入り前の娘をかっさらわれたような、大事なモンを盗られた気持ち。ぐっすり寝ている柏木には、伝わりもしねぇだろうけど。
「なぁ、悠里、
俺だってお前のこと、名前で呼びたいんだぜ」
そう出来ないのは、無駄に高いプライドが邪魔をしているのか。はたまた俺が、フラれるのがわかっててビビってるからか。
赤葦や月島と、だんだん距離が近くなってるのには気付いてた。それなのに俺は、ロクに行動に移しもしなかった。こんなことなら、さっさと俺のものにしておけば良かったと、後悔して。
だから今だけどうか、許して欲しいと。そう思って目を閉じる。肩に乗った柏木の温度と重みを感じながら、俺はその頭に自分の体重を少しだけ乗せ、にじり寄る睡魔に身を任せた。
第7章 終