第5章 勉 強 会 と 夏 空
てかさ、と少し前を歩く柏木さんが振り向く。
『京治の私服、初めて見るかも!』
「言われてみれば、いつもジャージですからね」
黒のクロップドパンツに白の半袖シャツ、特に何の変哲もない普通の格好だ。
『素材が良すぎるから何着ても似合うな...』
「お褒めの言葉、どうも」
『その余裕すらも着こなしてる感じ、なに!』
そもそもわたしの周りに不細工がいない、かっこいい人しかいない、ほんとにやめてほしい、だってわたしだけ、適当なカッコできないじゃん、どうせリエーフも黒尾もみんなオシャレしてくるし、ただの勉強会なのに、と、どこで息したんだろうって速さで突っ走る。
まぁ、ただの勉強会だと思ってるのは柏木さんだけですからね。
そうこうしているうちに、柏木さんのお宅に到着。お邪魔しますと入れば、心地よい冷気。これこれ、夏の醍醐味。ご両親に挨拶をし、2階へと案内される。
『わたし一人っ子だからさ、
お陰で部屋めっちゃ広いんよね』
なんと12畳、と言いながらピースする柏木さん。部屋に案内されれば、なるほど確かに、かなり広い。東側に大きめの窓がひとつ、その近くにベッド、勉強机、ローテーブル、そしてたくさんの本棚。大学の教科書や、バレーに関する本、それに小説や漫画が所狭しと並んでいる。
『なんか本棚見られるの恥ずかしいから、
あんまり見ないでくれると嬉しいな、なんて』
「いえ、興味があるので見ます」
『後輩が言うこときいてくれない!』
もうっと拗ねる柏木さん、ちょうど階下から黒尾さんと孤爪の声。壁に立て掛けてあるテーブルを広げて欲しいと言って、柏木さんは2人のこと呼んでくるねと部屋を出ていった。
テーブルを広げれば、5,6人なら勉強できそうなスペースが出来上がる。準備が整ったところで、麦茶のボトルとコップを持った柏木さん、孤爪と黒尾さんが上ってくる。
「なんだ、赤葦が一番乗りか」
「乗り換え上手く行ったら早く着いたんです」
黒尾さんにそう返し、孤爪におはようと挨拶。各自勉強道具を広げれば、ちょうど時計の針は1時。あと来てないのは灰羽だけだ。