第5章 勉 強 会 と 夏 空
そうして約束の土曜日。
梅雨のど真ん中にしては珍しく、晴予報。連日の真夏日も、このぐらい湿度がなければ案外過ごしやすいものか。集合時間は午後1時、一番暑い時間帯にエアコンの効いた室内で勉強しよう、ということらしい。
最寄駅に着いたのは集合時間の30分前で、その旨を柏木さんに連絡すると、すぐ電話がかかってきた。
『もしもし、京治?』
「おはようございます、ちょっと早すぎました」
『おっけ、じゃあそっちまで行くから、
コンビニとか涼しい所にいてね』
「それだと住所教わった意味が無いですね」
待ってそうじゃんうけると笑う柏木さん。京治はどっちがいい、と聞くから、ちょっと迷った振りをして、駅までのお迎えを頼んだ。
駅によくあるあの緑色のコンビニの中で、お菓子を物色する。普段食べないけど、意外とあるもんだな。このグミなんて美味しそう、梅かつお味、渋いな。
10分ほどで柏木さんは駅に来た。頬を上気させるその姿は、まるで急いできたと言っているようで。
「走ってきたんですか、外暑いのに」
『いやいや、可愛い後輩待たせちゃ悪いでしょ』
可愛い後輩、か。
可愛い先輩にお礼を言えば、喉乾いたからお茶だけ買うとレジに並ぶ。外食減らすのにうちに呼んだのに、コンビニで買い物したら元も子もないね、と、柏木さんは笑った。
家までの距離は10分ほど、先程走ってきてくれたであろう道を、今度は2人でゆっくり歩く。アブラゼミの鳴き声をBGMに、コンクリートの上をなるべく日陰を選びながら行く。
『あっづい...なんで黒い服にしたんだろ...』
「俺もです、こんなに日差し強いと思ってなかった」
『いやまじ、ほんとそれ...
500のペットボトル秒で無くなるんだけど』
いつの間にか3分の1まで飲んだお茶のボトルをぶん回して歩く柏木さん。黒いゆったりとしたノースリーブワンピースに、白い薄手のカーディガンと、白のサンダル。
合宿の時に初めて見たボブの髪は、染めたミルクティーの根元に黒が混じりだし、先端も少しだけ伸びていた。