第5章 勉 強 会 と 夏 空
お腹いっぱいになった帰り道。
『またみんなで勉強会しようよ、
一緒だとめっちゃ楽しかったんだけど』
「それは、悠里だけ」
『孤爪そんなこと言わないで…』
まぁでも実際、灰羽はすごく嫌そうだったし、孤爪も疲れてたからあながち間違いではないかも。
『ねぇ黒尾、あんたの家貸してよ』
「うちィ?デカさならリエーフの家だろ」
『うぅん、わたしが近いから』
「お前喧嘩売ってんだろ」
「柏木さん、黒尾さんと家近いんですか?」
柏木さんは、そう最寄りが一緒なの、と笑う。いいな、この人、高校が同じだけじゃなくて家まで近いのかよ。逆になんで、これまで手出してこなかったんだろうな。
黒尾さんが柏木さんと話す時、ほんの僅かにだけど声のトーンが上がる。他の同級生と同じようで、少し違う。灰羽に持っていかれるくらいなら、先に既成事実ぐらい作っておけば良かったのに。変なところで、臆病な人。
『ん〜、土日ならだけど、うち使えるかも』
「お、柏木まじ?」
『まじまじ大まじ〜、
家のお母さん大人数のご飯作るのとか、
慣れてるから1食ぐらいならいけるよ』
「悠里の家で勉強会やりたーい!」
柏木さんの一言で、トントン拍子に進む。
『京治のところ試験いつ?』
「来週の水曜からです」
『じゃあ、次の7月頭の土曜日ね!』
「やったぁ!また布団敷いて寝ますか!?」
『いや、普通に帰れな』
なんでスかと食いつく灰羽、いや、それよりも。
‘また’布団敷いて寝ますか、って、言ったよな。
ふぅん、そういうこと。もうやる事やってんだ、あぁそう。あぁ嫌だ、聞きたくなかった。
別に全然俺のものじゃないって知ってたし、なんなら別の奴の彼女だしって知ってたけど。それでも、傷付いている自分がいるのに腹が立つ。
「じゃあ、住所教えて欲しいんで、
柏木さんの連絡先もらっても…」
『あ、そうじゃん、はいどぞです』
QRコードを見せる柏木さん。追加すれば、アイコンは音駒ジャージの後ろ姿で、名前は‘悠里’と書いてあった。ありがとうございますと言いながら、俺は心の中でガッツポーズをした。