第5章 勉 強 会 と 夏 空
木兎さんの話をしながら、席に戻る。黒尾さんの隣に孤爪がスライムのようにぐでっと突っ伏している。フルセットやったぐらいの疲労感、気の毒に。
灰羽の横に柏木さん、俺が座れば、赤葦さんはあっちに行ってくださいと敵意バチバチの灰羽。向こうは黒尾がいるから可哀想でしょという柏木さんに、俺と一緒なのは光栄だろと黒尾さんが噛み付く。
そうして、頼んだサラダやピザが所狭しと並んだ。隣には美味しそうにサラダを頬張る柏木さん、小動物みたいで可愛い。
『京治、なんか顔についてる?』
「いえ、可愛いと思いまして」
『むぐ、っ』
喉に詰まらせる柏木さんの背を、大丈夫ですかと叩く。灰羽は黒尾さんとパスタの早食い勝負か、こちらはあまり見ていない。これ飲んでくださいと自分の烏龍茶を渡せば、ごくごくと飲み干す柏木さん。
『まじ、あんた顔が良いの自覚しろ......』
「それは知ってます、柏木さんが言うなら
なおさら、武器に使わない手は無いです」
『やだ赤葦、悪い子...』
口を手で抑える柏木さん、飲み物取ってきますと席を外す。烏龍茶を注ぎながら、後ろを見れば灰羽となにやら話している。またなんか灰羽に言われてるのかな。距離近いとか、赤葦さんはダメとか、大方そんなんだろう。
そんなに怖い顔しちゃって。やっぱり柏木さんは灰羽にはもったいないよ。お前の彼女、俺の事名前で呼んでくれてるよ。さっきも、俺がわざと関節キスするように仕向けたよ。
「戻りました」
『おかえり京治』
「ん?あ、あぁ!」
『なに、リエーフ』
「ケイジ、って、まさか、赤葦さんの名前...!」
「いつ気付くのかなって思ってました」
わざと煽るように言えば、ぐぬぬぬぬと歯ぎしりをする、自分より大きな後輩。どうしてこんなに単純で、頭悪そうなやつが選ばれたんだ。自分の中に、黒い感情。
「柏木さん、灰羽に飽きたら、
いつでも俺のとこ来てくださいね」
『京治ってばまたそんなこと言って』
「けっこう本気ですからね」
『はいはいありがと』
まるで普段から聞き慣れている冗談かのように聞き流す柏木さん。ただひとり、灰羽だけが、ものすごい剣幕で俺を睨みつける。
そうやって、どんどん意識して。いつか自滅してくれれば、それでいい。