第4章 初 体 験(♡♡)
昼休みの大学、カフェテリアで待ち合わせた黒尾からレジュメを受け取れば、お前が休むなんて珍しいなと言われる。
『リエーフのこと、病院まで送ってきて』
「なんか、泊まったみてぇな言い方」
『泊まったんだよ、うちに』
あの子、電話した時捨てられた子犬みたいだった。
そう言えば、ニヤリと黒尾の口角が上がる。しまった。面倒くさいことを教えてしまった。帰りたい、ものすごく帰りたい。
「へぇ、ついにあいつも男の仲間入りかァ」
『さぁどうでしょうね』
「絶対そうだろ、だってあいつ、」
つん、と、首の後ろをつつかれる。
「ご丁寧に虫除けまでしてるぜ」
『え、なに、あっまさか!』
やられた、目に見えるところになかったから大丈夫だと思ったのに。ちょうど髪で隠れるかギリギリのところ、項に咲いた赤い華。
『くっっっそ、やりやがった…』
「お前、いつかストレスで禿げてそう」
『その時は黒尾の毛も禿げさせる』
「俺とばっちり過ぎじゃね?」
そんな話をしていれば、3コマ目を取っている黒尾はそろそろ時間だと言って教室の方へ向かっていった。
ぽこん、と、スマホが鳴って、通知をタップする。
全拒否靭帯半分切れてました、全長1ヶ月以上です
もちろんリエーフからで、病院の検査の結果なのだろう、ものすごい誤字だな、でも言いたいことは分かった。リエーフにとっては、長い1ヶ月になるかもしれない。それでも、その間にもできることをやるしかないのだ。
栄養をつけて、できる範囲で筋トレをして、ボールに触る感覚を忘れないで、試合の振り返りをして、敵チームのスカウティングをして、それらを反復していく。
そうやって、少しづつ、進んでいく。
私にもできること手伝うからね、と返信すれば、えっちしたいですって来た。こいつほんまに怪我人なのかないっぺんシバかないとだめかなまじで。夜久に頼むか。
『ま、元気ならいいか』
来週は試合は無いけれど、きっと会場には行くだろう。その時に会ったら、お説教しないと。あ、そうだ課題やらないとなぁ、と思いながら、わたしは大学を後にした。