第1章 高 校 卒 業
教室に戻る道のり、行きのそわそわと浮き足立った気持ちがなくなり、一気に卒業を実感したわたしたち。各所から嗚咽が聞こえ、肩を抱き合い、言葉少なに歩いている。教室に着く頃にはみんな落ち着いたのか、談笑しながら今朝の座席に向かう、と。
机の上には、卒業アルバムが置いてあった。
一気にざわめきを増す教室に、先生が声を張る。
「じゃあ今から一人ひとりに証書渡すからね」
はぁいと良い子のお返事をすると、出席番号が早い子から順に、教卓で先生からの最後の個人面談を受けに向かう。
32番のわたしはまだまだ来ないので、奏深と一緒にアルバムをめくる。JKにとって苦痛でしかないノーマルカメラの個人写真は、ギリ見れるかなって顔をしている。それは奏深も同じようで、ブスすぎてまじうけるんだけど、と顔を合わせてげらげら笑った。
それから1年生の新入生オリエンテーションとかいうくっそ芋臭くて懐かしい写真や、昨日にも思える2年生の修学旅行の写真――広島と大阪・京都に行ったんだよね――や、最後の学祭、スポーツ大会の写真を夢中で漁った。
後ろの方にある何のためかよく分からんこんなことがあったよの社会年表の次のページには、真っ白な見開き。
「なぁなぁなぁなぁ、柏木ココ書いてくんね?」
ちょうどそのタイミングで黒尾に肩を叩かれる。見ると既に何人かに書いてもらった痕跡のあるアルバム。
『いいよ〜、わたしのにも書いて!』
「ゆーり、あたしのも!」
「あ、なら柳も頼むわ」
そういえば奏深の苗字は柳(やなぎ)だから証書もらうのめっちゃ最後じゃん、なんて思いつつ、3人でアルバムをぐるぐる回す。するとそこへ夜久が来て、隣のクラスに押しかけて海からももらい、ついでに仲良しの女バレの子からも一言書いてもらい…なんてしていると先生に呼ばれる。
『せんせーお願いしまーす』
「柏木さんいらっしゃい。相変わらず元気だね」
それは先生が好きだからだよ〜、なんて言いながら、卒業おめでとうの言葉と同時に証書を受け取る。先生の言葉が染みて、嬉しいのと悲しいのでちょっと泣きそうになる。苦手だった数学を先生が根気強く教えてくれたおかげで、わたしは志望校のランクを下げずに済んだ。
本当に、ありがとう。先生。