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大人になれないわたしたち《ハイキュー!!》

第1章  高 校 卒 業




部室内の忘れ物の最終チェックを済ませ、全員が出た後に鍵をかけるのは孤爪。卒業式が午前中で終わったら午後からそのまま部活なので、みんなリュックの他にエナメルやナップザックを背負っている。


部室棟から教室へと向かう道すがら、最後尾を並んで歩く孤爪がつんつんと腕をつついてきた。


『ん?どしたの?』


「部活前に写真撮影するから、悠里も来てね」


『もちろん行くよ〜!』


ジッ、と見詰めてくる2つの瞳孔に、同じくらいの高さにあるサラサラの髪をよしよしと撫でると、先を歩いていた灰羽が研磨さんいーなーとクソデカボイスで叫び、山本はお前が30cm縮んだらなと皮肉を飛ばした。


3年生の教室は最上階にあるため、途中で1,2年生にまた後でねと手を振る。教室うるさいからやだ…と孤爪が3年の教室までついてこようとしたから、後で会えるでしょと無理やり教室に押し込んだ。



最後くらい、と自由席にしてくれた担任のおじいちゃん先生の心遣いに感謝し、先に教室にいた親友の横にリュックを下ろした。3年間の高校生活を吹奏楽部に捧げた彼女は、ようやく肩の重荷が降りたのかサッパリとした顔で笑う。


「ゆーりおっはー。ついに来ちゃったねぇ」


『かなちんおっはー。今日卒業式だってさ』


明日から制服着ないの信じらんないね、と笑い合い、美大に進む子が朝描いたであろう黒板アートを眺める。


白と赤のチョークをふんだんに使った大きな桜の並木道、中央に空いたスペースには、おじいちゃん先生の達筆で「卒業おめでとう」の文字。そこへ男子がやれネコ型ロボットだの、やれ電気ネズミだの絵を描き加えていく。たまにめっちゃ上手いアニメキャラの絵があったりして。


文系クラスだったため、3年生でも比較的行事に積極的に取り組んできたこの4組。しっかりLJK堪能したなぁ、と教室に貼られているスポーツ大会の賞状や、学祭の遺産でもあるポスターをしげしげと眺める。


ぽつり、と隣のかなちん、もとい奏深(かなみ)が口を開いた。


「あたしもゆーりもさ、むっちゃ部活頑張ったよね」


『行事も頑張ったよねぇ』


チャイムが鳴った。最後のホームルームが始まる。


 
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