第3章 春 風 と 合 宿(♡)
月島ってなんで悠里センパイに絡むんだよ。
別にいいでしょ、それとも灰羽ってソクバッキーなの?
彼女に他の男が近付いてたら嫌だろ。
彼女ねぇ、そう思ってるの灰羽だけなんじゃない?
オマエなんなの、今日すげーうざい。
コ、コワイヨー、190cmの口喧嘩、怖いよー、全然アイスなんて食べれないー、食べるけどー。後ろにいるから見えないが、わたしのお腹に回したリエーフの手にはぎゅっと力が籠っていて、感情の昂りを感じさせる。
救いを求めて京治に視線を移せば、諦めなとでも言うかのように首を横に振られた。打つ手なし、か。段々とヒートアップしていく口論。そろそろ止めさせないと。
『リエーフ、もうそろそろ終わりにしよ、
寝てる子たち起きちゃうからさ、ねぇ…』
「悠里は黙ってて、俺怒ってるの」
『わたしも怒ってるよ!』
「だって、アイツが!」
リエーフ。
低い声を出せば、反論が止まる。お腹に回された腕を強引に振りほどき、反転して膝立ちでリエーフのほっぺたを捕まえる。
『ちゃんと、リエーフが好きだから、』
だから、そんな悲しくて、寂しくて、不安でたまらない、そんな顔、しないでよ。
ちゅ、と。日焼けを知らない真っ白なおでこにくちづけ。
「ッ、悠里…!」
『いまは、これが限界…』
ヒュウ、と京治が口笛をひとつ。
リエーフはとす、とわたしのお腹に頭を寄せ、それは反則なんですけど、と小さく呟いた。さらさらのシルバーの髪を撫でれば、するりと心地よい指通り。喉を鳴らす猫のように、リエーフはん〜と声を出した。
「カッコ悪いとこ見せちゃいました」
『これくらい、どうってことないよ』
でも喧嘩は怖いからやめてねと言うと、渋々お返事が来た。さて月島くんの様子は、と振り向くも、そこに姿は無く。デコチューしてすぐ出ていったよ、と、開け放たれた扉を京治は指差した。
気を悪くさせちゃったのなら申し訳ないな。でも、リエーフのことちゃんと好きだからなぁ、喧嘩してほしくないけど、仕方無かったよなぁ。自分のしたことが正解なのか間違いなのか、分からないや。