第3章 春 風 と 合 宿(♡)
2人は学校別の部屋に帰らないのかな、と思いながら、スマホを開く。孤爪に教えてもらったソシャゲ、まだ今日のログインボーナスをもらってなかったな、とスマホを横持ちにする。程よい固さにほぐれてきたアイスを口いっぱいに頬張れば、濃厚なミルクとバニラと甘さ。至福。
京治と月島くんはと言うと、静かにお互いの苦労話をしている。歳の割には随分大人びているし、特にリエーフと比べるとなぁ。普段の素行を思い出し、ふふと笑みがこぼれる。
と、デイリークエストが終わったところで着信が入る。電話の主は、もちろんこの人。
『もしもし、リエーフ?』
ぴた、と京治と月島くんが会話を止めた。
「悠里センパイ、今何してました?」
『ハーゲンダッツ食べてるとこ』
「え、俺も食べたい!今どこですか」
『今黒尾たちの部屋だけど、みんなどっか行って、
け…赤葦と、月島くんがいる』
「ふぅん……俺も行きます待っててください」
10秒で行きますと宣言すると、通話が切れる。そして少し息を切らせながら、本当に10秒でやってきた。
「おつかれ灰羽」
「どーも」
ぶすっと不機嫌そうなリエーフは、ずんずんとこっちへ来てわたしの後ろに陣取り、そのまま足の間に座らされる。まるで、京治と月島くんに見せつけてるみたい。
「悠里、俺にもちょーだい」
『いいよ〜、ちょうど食べ頃だし!』
はい、とアイスのカップを手渡すと、んーんと首を振る。
「そうじゃなくて、悠里が食べさせて」
あーんしてほしいの、と前後にゆさゆさ揺れるリエーフ。分かった分かった、アイスこぼれるから止まってと頼めば、大人しくなってくれた。
スプーンにアイスをこんもりすくい、口まで運べば、美味しそうにぱっくりと食べるリエーフ。めっちゃ美味い〜と嬉しそうな顔に、自然とわたしの顔もほころぶ。
『他のみんなにはナイショだからね』
「僕たちは見てるんですケド」
にやりと嗤う、月島くんに、リエーフは鋭い視線を飛ばす。ものすごい目付き、まるで天敵を睨み付けているような。
あれ、もしかして、同学年だけどここ仲悪い?