第3章 春 風 と 合 宿(♡)
合宿4日目の夜、食堂の片付けはマネちゃんたちがやってくれて、ビブスとかボールの管理は1年生がやってくれて、すっかり手持ち無沙汰。
お風呂も終わってるし、暇だし、みんなの部屋に遊びに行ってもいいよね。食堂のハーゲンダッツを回収し、OBに割り振られた部屋の戸をノックする。
『呼ばれて飛び出てじゃんじゃかじゃーん』
「こら、引き戸だからって足で開けるな」
『お母さんごめんなさい』
誰がお母さんだと言う夜久を、まぁまぁとたしなめる。そこには風呂上がりのみんな、だが何名か見慣れない輩もいる。
『ねぇ、高校生の時から思ってたけどさ、
木兎と黒尾って風呂上がり別人と入れ替わってる?』
「ンなわけねぇだろ、柏木っておばかだな!」
「なんですか、
くろーさんの風呂上がりは
魅力的でイケメンですか?エ?」
『あー、腹立つ、やっぱ帰る』
マテマテマテと片足ずつにしがみつくデカブツ2人。
その辺にあった布団の上に適当に陣取り、ハーゲンダッツの封を開ける。ずりぃと文句が飛び交うので、自腹切ったからいいんですぅと見せびらかした。ほれほれ、食いたいだろう。
ひとくち欲しいならはいつくばえと言えば、黒尾、木兎、木葉はははーと眼下にひれ伏す。気持ちがいいのぅ、下々の民が無様に懇願する様は。ほっほっほと高笑いすれば、がらりと扉の開く音。
「失礼します、黒尾さんいますか…って、
いい歳した人たちがなにやってるんですか」
『あ、月島くん』
アイスを掲げるわたし、それから平伏した3人、交互に見比べて、はぁっとため息をつかれた。悲しい。
「何してるんですか、柏木さんも」
『ハーゲンダッツで世界征服しようと思って』
「無理です」
『そすか…』
しょぼくれるわたしの前の梟2匹がぴよぴよとアイスを請う。フクロウって、ぴよぴよ鳴くの、絶対違う気がする。
監督に呼ばれている旨を月島くんが伝えると、すぐに出ていく黒尾と夜久。それから間もなく京治もやってきて、同じようにして木兎と木葉も出ていった。わたしはお呼びでないのかなぁ。
せっかくみんなの部屋に遊びに来たのに、ぼっちになってしまった。月島くんと京治はいるけど。