第3章 春 風 と 合 宿(♡)
木兎は寂しがったけど、もちろんわたしはマネちゃんたちのお部屋におじゃました。なんでも聞いてねって言ったら女子会始まっちゃって、音駒のハーフさんと付き合ってるんですかとか、黒尾さんといい感じって聞きましたとか。
月島くんは、赤葦くんは、木兎さんはとまぁそれはそれは詰められました。みんなキラキラした顔で聞いてくるから、何も、何も断れませんでしたよ、ええ。ただひとり、仁花ちゃんだけがなんとも言えない顔をしていました。
はい、わたしが馬鹿でした。
『ふぁ、ねむ……』
そんなこんなで寝る前に搾り取られた生気は6時間睡眠で何とか回復し、朝ご飯までは一応自由時間ではあるものの、みんなそこかしこで朝練やロードワークをしている。
つい癖で第3体育館に足を運べば、リエーフと日向くんを除いた4人がそこにいた。あとついでにゲームしてる孤爪もね。
「あ、柏木さんおはようございます」
『赤葦おはよう、相変わらず気付くの早いね』
「足音ですかね」
『前世、忍者かスパイ?』
まさか、と笑みをこぼす赤葦。残りの4人にもおはようと挨拶をし、孤爪の横にどっこいしょと座る。そうやってるとおばあちゃんになるよって言われたので、もう、言うのやめよう。
『朝練何やるの?』
「無難にサーブでいいんじゃね、
あんまり飛ばしすぎても痛めそうだしな」
『はいっ、柏木、球拾い入ります!』
ネットの反対側に走る。これでも小学校はバレー団に入ってたし、中学でもセッター対角としてレシーブを頑張っていたのだ。孤爪にボール出しを頼み、球拾いポジにつく。
月島くんの入れるだけ──多分試合だと嫌なところに落としてくるタイプの──サーブ、赤葦のジャンフロ、黒尾のすっぽかしホームランサーブと来て、木兎。
「柏木、あぶねぇと思ったら避けろよ」
『任せな』
ジャージの袖をまくり、レシーブ体勢をとる。木兎がボールを構え、宙に放る。とん、とん、と足を小刻みに動かす、咄嗟に動けるように、拾えるように。
球、来る、コートの右奥、目の前、ライン際、
『ッアァウト!』
寸前で避けるとエンドラインきわきわの、アウト。ぐはぁとうなだれる木兎に、思わず冷や汗。相変わらず、えっぐいサーブ。