第3章 春 風 と 合 宿(♡)
先に食べ終わった人たちの食器は、他のマネちゃんたちが片付けてくれたようで、まだ食べていないのはわたしたちだけだった。合宿も折り返し、3日目の晩ご飯はみんな大好きカレーライス。
『ちょっとリエーフ、半分寝てる?』
「そんなこと、ないスよ……」
『目閉じないで、ねぇほんとに!ちょ、黒尾!』
かく、かく、と首が折れそうになるリエーフ。いつもならおかわりまでいくのに、今日はそこまでたどり着かなさそう。疲れきって食べながら寝落ちしそうなリエーフをなんとか叩き起し、黒尾と夜久に任せることにした。
みんなも汗流しておいで、と食堂から送り出す。たまたま食べるのがのんびりで残っていた月島くんと赤葦が、食器の片付けを手伝ってくれることになった。
『じゃあわたしが洗うから、赤葦がゆすいで、
月島くんはテーブルとか先に拭いてきてほしい!』
終わったらお皿の拭き上げお願いねと頼むと、了解ですと返事。カチャカチャと皿の当たる音と、蛇口から流れる水の音が食堂に響く。
「気になってたんですけど」
『ん?』
「彼氏、なんで灰羽なんですか?」
なんで、そう言われるとちょっと分からない。気が付いたら好きだったというか、好きにさせられたというか、押しに、負けた、的な感じだったし。
『別にわたしも最初は好きじゃなかったんだけどね』
意外と優しいし、紳士だし、あと素直だし、まぁ押しに負けたのはあるかもしれないけどね。指折り数えながら言うと、隣の赤葦はふっと笑みをこぼした。
「そっか、柏木さんって押しに弱いんですね」
『自覚はある、何事にも、
はっきりNOと言える人間になりたい』
「へぇ、それは僕もいいこと聞いた」
テーブルを拭き終わったのか、月島くんも戻ってくる。2人とも何を言っているのか、わたしそもそも彼氏持ちだし。なんか、
『わたしのこと好きみたいに言うじゃーん』
おどけて言う、と。2人の手が止まる。そして顔を見合せて、不敵な笑顔。
『え…ちょっと待ってよ、何その顔』
「さぁ、なんでしょうね、月島お風呂行こうか」
「いつかわかるといいですネ、柏木さん」
『え、え、なに、ちょ、赤葦、月島くん!?』
リエーフとのお付き合い(仮)は、今月末まで。まさか、それも知ってて、狙ってるなんてことは。まさかね。