第3章 春 風 と 合 宿(♡)
ファミレスでの晩ご飯を済ませ、各々が帰路につく。ちょうど風呂上がり、自室に戻るとスマホにポコポコと通知音。
今話せる?
迷わず通話ボタンを押した。それもビデオ通話。
『もしもしリエーフ、ってこれビデ通!?』
待って待って化粧落としちゃったし、コンタクト無くて見えないんだけど、メガネどこだっけ、あったあった、よいしょ。画面が揺れ、がさがさと何かを探す音がする。そんなところですら可愛いと思う。
「お疲れ様、悠里」
『ありがとう、リエーフもね』
自宅用なのか、黒縁メガネをかけているがちょっと芋っぽくなるのも可愛い。それに、前髪も、うさぎのヘアクリップで両サイドにとめている。なんだか新鮮。
ところで話ってなんですか、と聞けば、気まずそうに口を開いた。
『あの、わたし髪も染めたし、
そもそもバッサリ切ったじゃん?』
「そうですね」
『リエーフに、一番に見せたかったなぁって』
時間的に会えないのも分かってたし、上手く調整できなくてごめんねと、画面の向こうの彼女はしょげる。全くどうしてこんなに可愛いことが言えるんだろう。俺、今なら世界救える。どんなスパイクも止められる。
目の前にいたら、間違いなく抱きしめてたのに。口角が上がり、ニヤニヤが止まらない。
「じゃあ、次、イメチェンする時は、
俺に一番に見せて欲しいです、それでチャラ!」
『っ、わかった!』
リエーフもイメチェンするなら教えてね、と笑うから、絶対そうします神に誓ってと返せば、そんな大袈裟なとけらけらと笑う。
それから、見学に来た新1年生の話をしたり、大学のキャンパス内の話や偶然中学の同級生に再開したことなんかを聞いて、寝る時間が近付く。名残惜しく思いながらも、電話を切る間際、おやすみ、大好きだよ、と。
「ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
ちょうど階段を下りるところだったらしく、レーヴォチカ大丈夫!?とびっくりしたアリサの声が扉の外から聞こえる。こんな、可愛いこと言われて耐えられるワケ。
もう会いたい、次いつ会えるだろう、なんて、思いながら。布団の中に潜れば、あのお泊まりを思い出してしまって。ひとり悶々としながら眠りにつくのだった。