第3章 春 風 と 合 宿(♡)
大学名に入学式と書かれた看板の前でピースする2人の姿。いいな、俺も一緒に撮りたかった。
『ねぇ、黒尾はまたバレーやるの?』
「どうだろうな、もうガチでやる気は無いしねぇ」
『わたしもどうしよっかなぁ...』
「部活の勧誘とかあるんスか?」
「もう今日から早速やってたぜ」
それな、と言いながらサラダを頬張る悠里。もちもちと膨らんだ頬っぺたがハムスターみたいと褒めたのに、この間ヘソを曲げられたからそっと胸の内にしまっておく。
「悠里センパイ」
『なぁに?』
「悪い人に捕まっちゃダメですからね、
あと変な部活とかサークルも禁止ですからね」
『えぇ〜、リエーフ保護者みたい』
そもそも変な人にはもう捕まってるよね、と研磨さんが言うもんだから、間違いないと笑われる。俺は至って真剣なのに。
「悠里センパイ可愛すぎてほんと心配...」
「大丈夫だよ、俺がいるし」
「いやクロさんも信用ならないです」
「ウン、これでも一応先輩なんだけどな」
俺の事なんだと思ってるの、ねぇねぇリエーフくん、ねぇ、ねぇってばと騒ぐクロさんを置いて、ドリンクバーをつぎに行く。炭酸は良くないし、ジュースの飲みすぎも良くないから、無難にウーロン茶にした。
そこへひょこひょこやってくる悠里。手際よくティーカップにアップルティーを用意しながら、こちらを見ずに話し出す。
『まぁ、リエーフの気持ちもわかるよ、
わたしだってリエーフがモテそうで不安だし、
可愛いマネージャー入ったらどうしようって思う』
マネージャーはいた方がいいのわかるんだけどね、それでも心配だし怖いものは怖いよ、と。
『だから、お互いが信用して安心できるように、
たくさんデートして、たくさん話そうね!』
にっ、と笑う悠里は、それはもう愛しくて。それに、俺たちは同じようなことを考えていたんだって分かって、ほっとした自分もいた。
悠里が彼女で良かった、と呟けば、天使のようにはにかんだ、照れた笑顔でどういたしましてが返ってきた。