第3章 春 風 と 合 宿(♡)
校門のところに、人影がふたつ。研磨さんも言ってたし、背の高い方はクロさんなのだろう。そうして、近づくに連れ、悠里の姿が記憶の中と違うことに気が付く。
もしかして、
『やっほ、リエーフ。おつかれさm...』
「えぇーちょっと待ってくださいよ!
悠里センパイ髪切っちゃったんスか!?」
下ろすと胸の辺りまで伸びていた綺麗な髪は、肩の上あたりで切りそろえられていて。なんなら色も違う、なんて言うんだろう、うすい茶色、ナントカベージュみたいなそんな感じ。
そしてカラーコンタクトでも入れているのだろうか、瞳の色もいつもよりほんの少し明るくて、黒目がきゅるんとしている。
それに、
「スーツじゃないですか!」
そう、スーツなのだ。黒いフェイクレザーのトートバッグに、低めのヒールパンプス、そして華奢な体にフィットするジャケットとパンツ。
部活ジャージを着ている時から知っていたけど、この人本当にスタイルがいい。出るところは程良く出ているのに、引っ込むところは引っ込んでいる。
『リエーフのこと、驚かせようと思って』
「俺のことも忘れんなよな〜」
そういうクロさんはヤクザみたいですねとうっかり本音をもらすと、誰が借金取りだよと威嚇された。
それからタイミング良く、というか研磨さん的には悪くだろうが、クロさんが研磨さんを回収し、せっかくなのでと駅前のファミレスにみんなで行くことになった。
「悠里センパイほんとに可愛いです、
髪切る前も好きだったけど、切ってからの方が
もっと可愛いです、髪色も素敵です」
『ふふ、リエーフありがとう、
どう、サプライズ成功した?』
大成功ですとハグすれば、リエーフうるさいと嫌そうな研磨さん。ここ公道だからね、落ち着こうねと悠里にもたしなめられる。こうやってこの道を一緒に歩けることがもう、幸せ。
まるで高校生の頃に戻ったみたいで、すごく嬉しかった。
パスタやドリア、サラダなど思い思いの品とドリンクバーを注文したところで、悠里がスマホを開く。クロさんと撮ったというそれは、入学式の写真だった。