第2章 両 想 い(♡)
「ただーいまー!!」
そう大きな声でドアを開けたリエーフ。打って変わってご機嫌な様子に、さすがに何があったか察する面々の表情が変わる。
『カンのいいガキは嫌いだよ』
余計なことを言いそうな人達に向けて、ぼそりと名台詞を呟くと、ハイと小さな返事がところどころから聞こえた。よしよし。
マルゲリータに照り焼きチキン、サラミにチーズと色とりどりのLサイズのピザ3枚。空腹で食べ盛りの男子高校生達にはたまらないご馳走で、買ってきたジュースと共にどんどん減っていく。
そうしてピザをつまみながらみんなでスマブラを極め、途中から始まったトーナメント戦は当たり前のように孤爪が優勝し、あまり遅い時間にならないうちに、今日はお開きをしようということになった。
家の遠いメンツからバスや電車の時間に合わせてちらほらと帰宅していく。変な気を使ってくれたのか、最寄りが同じ黒尾と孤爪まで帰ってしまう。時刻は22時をすぎた頃、ついにわたしだけになった。
ダラダラとバラエティを見ながらスマホで時刻表を調べる。おや、もしかして電車、動いてない?
『ねぇねぇ、明日って部活何時から?』
「えーっと、午後からです!」
『そっか、午後か...』
なんかありましたかと問うリエーフに、スマホの画面を見せる。
『なんかうちの最寄り、止まってるらしくて』
「え、まじスか!?」
リエーフがわたしのスマホを覗き込む。そこには、最寄り駅の名前とともに、無慈悲にも‘終日運転見合わせ’の文字が書かれている。色々と調べてみるが、どの路線もわたしの最寄りには止まらず、上下線共に折り返し運転をしているようだ。
『しまった...電車で10分だからと思って油断してた』
「クロさんたち大丈夫スかね?」
つい30分前に帰った黒尾と孤爪は、幸運なことに止まる前に乗ることが出来たらしい。うちも今日は両親は飲み会で車は出せない。駅からタクシーで帰れないことは無いだろうが、沿線のこの当たりもきっと帰宅難民でタクシーも捕まえにくいだろう。