第2章 両 想 い(♡)
リエーフの喉仏が、ごくりと動く。元の肌が白いから、頬と耳が朱に染まっていくのが分かる。しばしの沈黙の後、そっとわたしの手を握り、真剣な顔で告げる。
「悠里センパイ、今日うち泊まってください」
『へ?』
「「「待て待て待て待て!!!」」」
黒尾、夜久、山本の制止が一斉にかかる。呆れ顔の孤爪と心配そうな福永と芝山。うぅ、申し訳ない。どうしてこうなるんだ。
「リエーフ!それはダメだ、不純異性交友だ!
キャプテンとして見過ごす訳にはいかない!」
「クロさんもう卒業したじゃないスか!」
『いや別にわたし泊まらないからね!?』
「だからこいつは辞めとけって言ったのに」
「嘘だと言ってください悠里サアァァアン!」
「大丈夫です、悠里センパイ、幸せにします」
阿鼻叫喚。と、言ったところで、昼にリエーフが頼んだというピザが届いた。わたしにとっては救いのインターホン、リエーフにとってはお預けの残念なお知らせ。
命からがらリエーフの横から抜け出し、ダイニングの孤爪の横へと腰掛ける。圧倒的安置。
「だいじょうぶ?」
『なんとか......心臓は瀕死だけどね』
アハハと乾いた笑いをこぼせば、大変だねと他人事と、同情の混じった言葉が降ってきた。まったく本当に、リエーフと付き合うのは大変だ。
年功序列は関係なくじゃん勝ちで決められていくピザの味、わたしは残ったやつで良いよと声をかけ、残り少なくなっていた飲み物を近くのコンビニへ買いに行くことを提案する。
『誰か1人でいいから、荷物持ち来てくれない?』
「俺しかいなくないスか!?」
びょんびょんと飛び跳ねるリエーフを止める人はおらず、家主いなくなるけど良いだろという黒尾の一言で、わたしの付き添いはリエーフに確定する。
しっかりめの生地のエコバックと財布をカバンに入れ、歩いて5分程のコンビニへと向かう。
『っう〜、さむっ!』
「3月でも夜は冷えますね」
そう言うとリエーフはわたしの右手を捕まえ、自分のブルゾンのポケットへと連れていく。
「へへ、悠里センパイの手、誘拐しました」
そう言って、無邪気に笑った。