第2章 両 想 い(♡)
突然の訪問者に驚くわたしを置いて、リエーフがぱたぱたと駆けて玄関の鍵を開ける。ガヤガヤと賑やかな声が聞こえ、それらは聞き覚えのあるものだとやっと気付く。
「ちっすちっす、やってる〜?」
「黒尾サンッ、お菓子ありがとうございます!
研磨さんそんな重いの持って倒れませんか!?」
「別に、ペットボトルぐらい持てるし...」
「てかリエーフん家すっげーでかいな!」
呆けてるわたしの前に、見しったバレー部の面々。
「あれ、今日みんな来るって言いましたよね?」
『へ、?』
そういえば、言われたような、言われてないような、気が。いつの間にかリエーフは人数分のコップと、お菓子用の大皿をふたつほど用意している。
険しい顔でスマホとにらめっこをする孤爪がわたしの隣の椅子に腰掛ける。今日、なんかあったっけと小声で聞くと、ため息混じりに教えてくれた。
「みんなでスマブラ大会するんだって、
トラと芝山もあとから来るみたいだけど」
『あ、そう、だったね、ははは......』
「邪魔しちゃった?」
『ハイ!イイエ、ソンナ!そんな、ことは』
「あったんだね、ごめん、タイミング悪くて」
孤爪が謝ることでは無いから気にしないで、と華奢な肩を叩く。そう言われればそうだった気がする、スマブラ大会。それに、お邪魔されたのも、そうな気がする。わたし、もう少しで、好きって言うところだったし。
そうして50インチの大型テレビにゲーム機を接続し、各々が持ち寄ったお菓子とを広げ、第N回音駒高校男子バレー部スマブラ最強決定戦が幕を開けた。
わたしはと言うと、ダイニングテーブルから画面に夢中のみんなをぽけっと、見ているだけ。今は黒尾と夜久が最強設定のNPCと戦っているところだ。
「悠里センパイ、手伝ってください!」
『あ、リエーフ』
空になったみんなのコップに飲み物を入れに来たリエーフ。とけた氷を追加しにキッチンへ向かう。背後にリエーフの気配を感じ、振り向こうとすると、耳元に降ってくる声。
「さっきの続き、後で教えてくださいね」
逃がしませんよと言わんばかりに笑うリエーフに、あぁもうこれはダメだと覚悟を決めた。