第2章 両 想 い(♡)
奏深とあんな話をして以来、これまで以上にリエーフの事を意識している自分がいた。ちょっと手が触れ合ったり、名前を呼ばれて笑いかけられるだけで、トマトみたいに真っ赤になって、気が気じゃなかった。
その度にリエーフは、真っ赤になってる悠里センパイ可愛いですねと言うから、余計に心臓がばくばくして。もう、絶対バレてるし、わたしの気持ちなんて分かってるくせに。
今日は体育館のワックスがけで部活は完オフ。リエーフのご両親がお仕事で出張で、お姉さんも帰りが遅いと言うことで、灰羽家にお邪魔している。
お昼にたらこスパゲティを作ってくれたリエーフが、まだ食べ終わらないわたしをじっと見つめて言う。
「せーんぱい、俺のこと、好きになった?」
『へっ、い、いま!?
た、たらすぱ食べてるし、わ、分かんない』
「え〜、俺そろそろ言って欲しいんですけど!」
ダメですか、と、こてんと首を傾げながら見つめてくるリエーフ。顔が良すぎて直視できない、本当に無理。心臓もたないです。
『ま、まだ、ダメです』
「じゃあいつならいいですか?」
『そんな、こと...』
「せんぱい、」
俺、そろそろ待てなくなりそう。
じっと見つめてくる瞳は、捕食者のそれで。エメラルドグリーンに、吸い込まれそうな錯覚すら覚えて。わたしが持ってるフォークを取り上げ、スパゲティをテーブルの隅にやる。
空になった右手を、リエーフが捕まえて。
「俺のこと、好き?」
『り、りえ、ふ......手、あの...』
「答えてくれるまで、このままスからね」
もう、覚悟を決めるしかないのか。好きって言ったら、言ったら、どうなるんだろう。もう、そんなことを考える時点で取り返しがつかないほど惹かれているのは、分かりきっていて。
重ねられた左手は、男の子特有の骨ばった大きな手。でも、指は細くて綺麗で、あぁこの手でボールに触れているのかなんて場違いなことをぼんやりと感じて。
そうして、5分にも、10分にも思える時間が──多分ほんとは、数分にも満たないけれど──過ぎて、やっと口を開く。
『あの、リエーフ、』
ピ──ンポ──ン
静寂を破る、チャイムが、鳴った。