第2章 両 想 い(♡)
「なぁんかでも、灰羽くんの気持ちわかるなぁ」
『どういうこと?』
チーズケーキを切り分けて口に運ぶ奏深に問う。
「だって普通に贔屓目なしでゆーり可愛いし
美味しい物食べてる時の顔めっちゃ幸せそう」
男の子なら好きになっちゃうわよねぇ、ともう一口。
「あたしは灰羽くんのことあんま知らないけど、
でもあの子もかっこいいししかも紳士なら、
もうお試しなんかやめて普通に付き合っちゃいなよ」
『いやそれはちょっと早いって言うかさ...』
「ゆーり、」
ケーキを食べ進めていた手を止め、奏深がこちらを見る。
「あんた、灰羽くん好きになる許可でも取りに来たの?」
『え...いや、そんなことは、』
「そう思ってる時点でさ、もう好きじゃん?」
フォークでこちらを指して、にっこりと微笑む奏深。
リエーフのこと、わたしもう好きになってるのかも。それを自覚した瞬間、ぽぽぽと顔が熱くなるのを感じた。
『やだ、ちょっとまって恥ずかしいんだけど無理!』
「待っても〜ゆーりめっちゃ可愛いんだけど〜!」
恋してるわねぇと親戚のおばちゃんのようにはしゃぐ声が聞こえるが、それどころじゃない。本当に、チョロすぎないか、自分。だってまだ、たったの3週間だけど。
照れ隠しもあって、これ以上余計なことをしゃべらないように黙々とパンケーキを口に運ぶ。これほんとに美味しい、ドリンクもストレートティーにしたから甘さをさっぱり流してくれる。
美味しいな。リエーフにも食べさせてあげたい。
『あ、っ』
「どしたん?」
一緒に見たもの食べたもの、話したこと、一番に伝えたいと思うのは、間違いなくリエーフであると。すごく自然に、思ってしまって。
これはもう、紛れもなく。
『恋、しちゃってる...』
「いやぁ、部活ばっかのゆーりにも、
ようやく春が来たかぁ、青春だねぇ」
『待ってもう、からかわないで、恥ずすぎる』
どうしよっかな〜ゆーり可愛いからな〜とキャッキャと笑う奏深の声に紛れて、スマホの通知音が鳴る。メッセージの送り主はリエーフ、それだけで口角が上がっている自分がいた。