第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
嫌がる研磨をなだめながら、お目当ての黒尾を探せば、今度は京治に絡みついてる。なんなんだろう、このすごく面倒くさい先輩ムーブ、自ら嫌われに行ってるのかな。
『京治も、大丈夫?』
「あぁ、柏木さん...
孤爪が呼んでくれたんだ、ありがとう」
やつれた顔をしている手にお茶のコップを握らせ、赤葦が食べないなら俺が食う、と頬張る黒尾の背中を引っぱたく。
『京治がこんなになるって、あんた何したのよ』
「別にィ?
肉食わないからあげててただけですぅ」
この前うちでご飯食べた時は、普通に一人前ぐらいなら食べられてたのに。食べすぎて胸焼けしてそうな顔の京治は中々珍しい。研磨と京治の間に座り、両手で2人の背中をさすってあげる。
少し落ち着いたのか、木兎さんは、とぽつりと呟いた京治に、あいつがどうしたのと聞き返す。
「木兎さんは、面倒くさい人でしたけど」
『うん、知ってる』
「黒尾さんもなかなかに面倒な人ですね」
『あー、わかる』
「おい、なんでだよ!」
ボクは面倒くさくありません、と詐欺師もびっくりな胡散臭い笑みを浮かべる黒尾。すかさず研磨がクロが嘘吐きだったから俺は一番体も頭も使うセッターやる羽目になったんだよ、なんて反撃をする。
前だったらここまで言ってなかったろうな、と思いながら、黒尾と研磨がおっぱじめた口論を傍観する。わたしたちが卒業してからの研磨は、なんだかちょっぴり頼もしい。最高学年としての責任感なのか、それとも烏野の日向くんのお陰なのか。
後者だったらちょっぴり切ないけど、でも今の研磨がバレーを楽しんでくれてるなら、本望だな。
「柏木さん、お母さんみたいな顔してる」
『え、老けてる!?』
ジッ、と見てくる京治がそんなことを言うから、嘘でしょどこにシワとシミがと顔中を触りまくる。最近日焼け止め塗るのサボってたのがまさか顕著に出ているのでは。
「そうじゃないです、
孤爪と黒尾さんを見てる表情が、ですよ」
『あ、あぁ、そういう...
黒尾はともかく、まぁ研磨はそうだね、
あんなだから手はかかるけど、可愛い後輩だよ』
可愛い後輩、ね。
意味深な言い方をする京治に首を傾げれば、孤爪も大変ですねと返される。そうだね、本当に大変だよ。あんなバレー馬鹿に捕まっちゃって、さ。