第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
黒尾にちょっかい掛けられてる蛍を救出し、お肉くださいと聞こえた方へ走れば、リエーフたち音駒の2年生。
「悠里センパイッ、お肉!お肉!!」
『分かった分かった、野菜も食べてね』
からっぽの網の上にトレーの中身を順番に全部乗せて、焼けるのを待っている。と、後ろから伸びてくる手がお腹に回る。
『ちょっとリエーフ、やめなさい』
「ンン、ちょっとだけ、充電したいんスけど」
『みんないる所はダメだって言ってるでしょ』
ベン、と空のトレーで手を叩く。じゅわじゅわと、お肉の焼けるいい匂いが漂う中、巨体を屈めてめそめそと泣くふりをするリエーフを放置し、他の子たちのお皿にお肉を載せていく。
「えっ、柏木さんいいんスか!」
『どうせリエーフがほとんど食べてたでしょ、
今のうちに食べないとお肉無くなるよ』
「いや、そんなことは無いよね、球彦くん?」
「そう、とは言いきれないかな」
『みんな......ほんとにごめんね...』
やっほいと喜ぶ犬岡、申し訳なさそうな芝山、そして嘘がつけないというか素直すぎる手白。しょげリエーフのお皿にはタマネギとピーマンだけ載せて、新しくお肉と野菜を取りに監督たちのところへ向かう。
昼間からビールを飲んで酔っ払ってる監督連中に絡まれている、武田先生と烏養コーチ──2人は帰りの運転があるから飲めない──が可哀想になってくる。
すみません武田先生、と心の中で手を合わせ、新しく食材を持って足りないところが無いか回りながら焼いていく。どこかから、助けを呼ぶ声が聞こえた気がして、辺りを見回せば、その声はより鮮明になる。
「ッ、たすけて、悠里!」
『えっ、研磨!?』
がばっと飛び込んで背中に隠れた研磨に、一体何が起きたのかと問う。俺もう食べ物見たくない無理吐く、と背中にしがみついてくるから、何となく察した。
確か‘少食の人たちにたくさん食べさせるのがミッション’、の人がいたきがするんだよね、たしか。
『もしかして、黒尾?』
「俺クロのことは好きだけど、
こういうところほんと嫌い、ほっといて欲しい」
黒尾が聞いたら卒倒しそうなセリフを吐いて、研磨はお茶をごくりと飲み干した。自業自得、ってやつだね、黒尾。