第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
合宿の成績は、去年のたったの3勝から一気に伸び、勝敗は五分五分と言ったところで幕を閉じた。ちょうど参加した5校の真ん中辺りで、まぁまぁ頑張ったんじゃないのって思える。
そうして始まった、お肉争奪戦ことバーベキュー大会。腹を空かせた運動部の男子高校生たちの前に、あれよあれよと肉は減っていく。これ、監督たちのサイフ大丈夫なのかな。
「ツッキイイィ、
さっき俺の投げキッス無視しただろ」
「うわ、ちょっと何するんですか」
端っこの方で細々とやっていたら、面倒くさい人に見つかってしまう。なんの恨みか知らないが、あれこれ皿に載せてくるから、それを黒尾さんの皿に戻すっていうイタチごっこが始まる。
「大地さんが居ないから、
他校のOBを止める人がいない…!?」
「山口なに見てんの、早くこの人止め…むぐ!」
あわわわと挙動不審になる山口。口に肉を突っ込まれ、強制的に咀嚼に労力を割かれると、ニィと悪い顔をした黒尾さんがそこにいる。もっと食べなさいほれほれって、そんなに載せられても食べられないんですけど。
『黒尾!』
「ゲ、面倒なのに見つかった…」
『今めんどくさいの来たと思ったでしょ!?』
お肉と野菜が満載の銀のトレーを持った柏木さんが、黒尾さんにトングを向ける。救世主が来た、とでも言いたそうな山口に、タイミング良かったねと言う意味で頷く。
『もう、またそうやって蛍のこといじめてる、
他校生構いすぎて研磨が引き篭ってるじゃん!』
柏木さんがトングで差す先、孤爪さんと赤葦さんが並んで座ってちびちび食べている。少食な人にたくさん食べさせるのがミッションです、と言い残して黒尾さんはそっちに走っていった。
「すみませ…」
『いいよ、喋るの食べ終わってからで、
山口くん、蛍にお茶取ってきてもらっていい?』
私両手塞がっちゃってて、とトレーとトングを掲げてみせる。分かりました待っててねツッキーと山口はペットボトルのお茶が置いてある方へ駆けていく。
『あ、ほっぺに焼肉のタレついてるよ』
す、っと手が伸びてきて、僕の口角をぬぐう。後でちゃんと拭きなよ、と言って、お肉くださいと叫ぶ声の方へ柏木さんは姿を消した。その場にしゃがみ込み、触れた位置をそのままなぞる。
あぁもう、ほんとなんなのこの人。顔、あっつ。