第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
去年の夏合宿は我ながら酷い結果だったと思うけど、今年はそれなりに全然したと思う。3年生が抜けたことでどのチームも色々変化があって、それを実感すると共に面白いなと思った。
高校3年間なんてあっという間で、長い人生の10分の1にも満たない短い時間。それを部活に費やしたところで何を、と去年の今頃までは思っていた。
たかが部活、それがどうした。それでも、僕は、僕たちはバレーボールが楽しいと気付いてしまったんだ。疲れるし、しんどいけど、それを凌駕する熱量の興奮が待ってるから。
「ツッキー、ナイスブロック!」
「山口も、ナイッサ」
ハイタッチをすれば、満面の笑みを浮かべてくれる、仲間たちがいるから。バレーボールは、楽しいって。今は、そう思える。
試合終了のホイッスルが鳴る。音駒戦は無事に勝利し、少しだけ気分も上がった。外野の黒尾さんがうるさかったけど、灰羽のこと何本か止めたし、悔しそうな顔見るのはやっぱり気持ちいいな。
負けて柏木さんに泣きつこうとしている灰羽を、柏木さんは片手で抑え、コーチと色々話している。あぁいう時の真剣な顔は、遠くから眺めていても綺麗だなって思うんだよね。
「はい、烏野一旦集合!」
縁下さんの召集がかかり、試合後の振り返り。最終日ともなればかなり疲れも溜まってくる頃、縁下さんは着火剤に火をつけるかのようにニヤリと笑って言う。
「今年も、昼飯はバーベキューだってよ」
「「「B・B・Q───ッ!!!」」」
単細胞4人がお肉お肉と騒ぎ出し、何事かと体育館の視線が集まる。山口に一言断って、少しでも体の熱を苦そうと渡り廊下の水道へ向かう。今日も朝から蝉の合唱がまぁうるさいこと。
体育館への戻り際、ボトル籠を抱えた柏木さんとすれ違う。
「オツカレサマデス…」
『あ、蛍!
おつかれさま、バーベキューの話聞いた?』
今年もお肉パラダイスだね、と嬉しそうに話す柏木さん。それから、蛍はひょろいんだからたくさん食べないとダメだよと、僕の方を指差して悪戯っぽく笑う。
「安心してください、柏木さんよりは重いんで」
『蛍がわたしより軽かったら殴り飛ばしてやる』
そんな冗談を言い合って、じゃあまたと別れる。何度も呼ばれた名前に、熱は冷めるどころか籠る一方だった。