第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
渡された試合表を受け取れば、よろしくねとにっこり笑ってパタパタと走り去る小さな背中。
「柏木さんって…ミーアキャットみたいだよね」
「山口…?」
怪訝そうな顔で聞き返せば、悪口じゃなくて、と顔の前で手をぶんぶん振って慌てて弁解する山口。
「ちょっと抜けてて小動物っぽいんだけどさ、
でもすごい仕事できる人だよなーと思って」
いつも周りをよく見て観察してるところがそれっぽくて、と続けるから、なるほど言い得て妙だと思う。ミーアキャットか。その割に、自分に近付いてくる男を認識するのは随分近くまで言い寄られてからだけど、ね。
現に今も、灰羽が連れてきた日向と影山にも絡まれてて、何やらレシーブの話をしている。第3体育館での練習の時に知ったが、中学時代バレー部でレシーブに定評があったらしい。
あ、笑ってる、何の話してるんだろう。日向、めっちゃ飛び跳ねてるし、灰羽も真似してる。レシーブの構え、重心の話、かな、分かんないけど。西谷さんも混ざった、あと音駒と梟谷のリベロも。
「あの人たち、なんで朝からあんなに元気なわけ」
「いつの間にか人集りになってるし、賑やかだね」
俺も朝はきついかなぁ、と苦笑いする山口。僕は朝じゃなくても嫌だけどね。
手元の試合表を見れば、第1試合は音駒と烏野。あのうるさい発情期の猫たちを黙らせる良い機会だ。スポーツグラスをかけなおし、山口に声を掛け、縁下さんに試合表を渡しに行く。
体育館の反対側では、音駒の部員と談笑する柏木さん。僕と山口に気が付いたのか、肩の辺りでひらひらと手を振る。
「ねぇ、あれ俺たちかな?」
「そうじゃない、目合ってるし」
「どうしよう、手振っていいかな!?」
「柏木さん上下関係とか、
そういうの気にしない人だからいんじゃない」
じゃあ、とおずおずと手を挙げて控えめに振り返す山口。それが嬉しかったのか、隣の黒尾さんの肩を叩き、こっちを指差しでなにか喋っている。
すると、黒尾さんがわざとらしく投げキッスをしてきて、山口は笑いを堪えきれずに声が漏れている。僕は相手にするのも嫌になって無視をすれば、柏木さんの隣の黒い人からツッキイィィィイイと叫び声。
あー、うるさい人。