第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
今年の夏休みの合宿も、いよいよ最終日を迎えた。
昨日の雨が一転、朝から気温はぐんぐん上がり、合宿前半のような熱中症の気配すら漂う朝だった。
昨日の夜、イチかバチかの勝負に出た結果、柏木さんからの名前呼びを獲得。あの後寝る前に、山口になんか良い事あった、って聞かれたから、多分顔に出てたんだろう。柏木さんが絡むと、どうも調子が狂うのは、今に始まったことじゃないケド。
そんな、顔に出るほどイイコトがあったにも関わらずテンション爆下げなのは、食堂で山口と朝ご飯を食べていたら、灰羽と日向に食事量のことで絡まれてウンザリしているところ。
『こーら、リエーフ、日向くん、
蛍に構いすぎ、自分の分食べなさい!』
「悠里センパイは月島の味方なんですか!?」
『わたしそんなに話しかけられたら、
全然集中して食べられないと思うもん』
「「スミマセン…」」
柏木さんがひょっこり口を挟んで軽くお説教、しょぼくれたやかましい奴ら2匹を鼻で笑うと、山口と下膳に向かう。そういえば、ナチュラルに名前で呼んでくれたな、と思って振り向けば、2人になにか小言を言う柏木さんの耳はほんの少し赤かった。
「ねぇツッキー、
やっぱり音駒のマネさんと何かあった?」
「別に。なんでもない、行こう山口」
「あ、うん、待ってよツッキー」
相変わらず、こういうのは目敏いな。
昔から僕のことばっかり見てた、幼馴染み。その観察眼は、小中高で日々の生活の中で育まれたものだろう。ウォーミングアップのストレッチをしながら、隣であのねツッキーそれでねツッキーと喋り続ける姿を横目で見る。
山口も、この1年で随分変わった、もしかしたら僕以上に。そんなことをぼんやりと考えていたから、駆け寄るその姿に気が付かなかった。
『あ、いたいた、蛍くん山口くん』
声を掛けられて顔を上げれば、柏木さん。
『烏野の子、まだ誰も体育館来てなかったから
これ、今日のスケジュールなんだけど、
縁下くんに渡してもらってもいいかな?』
マネ用と予備もあるから、と言いながら、顔の横に落ちてきた髪を耳にかける。さり気ないそんなところすら、可愛いなと思う。